桃源郷

今回はちょっと俗世間の話をしたいと思います。私が子どもの頃に育った故郷は「倉岳町棚底字目玉」という戸数が8軒しかない小さな部落でした。当時はどこの家庭にも家族が平均7,8人いましたので、部落には60人以上は常に住んでいたように記憶しています。しかし、その後は集団就職や進学で年々若者がいなくなり、残されたのは祖父母や両親だけの部落になってしまい、さらに歳月が経過し現在に至ると、8軒のすべてが空き家状態となってしまいました。

私自身の故郷と同じような過疎化の問題が全国各地で起きているのが現状です。日本の人口減少においては特に地方の過疎化の方が問題は大きいと思います。日本の人口は我々の子どもの頃より何千万人も増えているのですが、人口が都会に集中し、地方は人口減少が続いてきました。何十年ぶりに同じ郷土の知人と話しましたが、子どもの頃の部落は「桃源郷」のような理想郷とも言える処だったと知人は話していました。まさにその通りで懐かしい思い出ばかりです。

部落の8軒すべてが空き家と申しましたが、どこの家庭も残った家族は皆亡くなってしまったのです。テレビで観るイタリアの小さな村のように、若者が村に戻って故郷を守ることができればいいのですが、日本では実際に生活が成り立たないから子どもが故郷に戻らなくなるのです。収入源となる産業が存在すれば人口も集まりますが、人口が減れば産業も地域から無くなりなります。失われた30年より日本の将来にとって深刻な事態だと考えます。